労働者のための労働法講座DIY教室

Ⅰ.労働基準法編-5

東京労組顧問・中央大学名誉教授 近藤昭雄

5.休憩時間は、きちんと確保されていますか。

①使用者は、労働時間の長さに応じて、一定の長さの「休憩時間」を与えなければ、なりません。
休憩時間の長さは、労働時間が
〜6時間の場合−0(付与義務なし)
6〜8時間の場合−45分
8時間超の場合−1時間
となっています(34条1項)。
②休憩時間付与の原則
Ⅰ.途中付与の原則(34条1項)−休憩時間は、労働時間の途中に与えるものでなければなりません。当然であるだけに重要なものですから、例外は、ありません。
Ⅱ.一斉付与の原則(34条2項)−−休憩時間は、事業場の労働者が一斉にとれるようにすることが原則です。小さなことのようですが、労働者が一斉に休むことによって、初めて、相互のコミュニケーション作り、仲間との付き合いが可能となり、「人間らしい働き方・豊かな職場生活」が確保されるものです。ですから、この原則を、大事に護るようにして下さい。
ただし、過半数組合あるいは過半数代表者との間で、書面による協定(労使協定)が結ばれた場合には、分割付与(事業場の労働者を何組かに分けて、順次休憩時間をとらせるような方式)も、可能とされます(同項ただし書)。ただ、あまり細かに分割してしまうと、不規則な休憩時間となって、体のリズムを狂わせる結果となることに、注意して下さい。
Ⅲ.自由利用の原則(34条3項)−−休憩時間は、労働者が、使用者の拘束から解放されて、完全に、「自分の時間」に戻るものですから、その時間を、どのように使うかは、全く労働者の自由であり、使用者は、そのような自由を保障しなければならないという、当然のことを定めた原則です。したがって、労働者は、どこで、何をして時間を過ごそうと、自由なのですから、たとえば、休憩時間中も、事務所に止まって、電話番をしろとか、来客や緊急事態に対処しろとか命じられている場合には、たとえ、現実に、電話の1本も、1人の来客も、何の緊急事態の発生もなかったとしても、使用者の指示に基づき、「待機」していた時間ですから、先に、「労働時間概念」のところで述べたように、「手待ち時間」であり、「労働時間」にカウントされるべきものです。したがって、そのような場合は、当然に、賃金支払いがなされるべきですし、その時間を加えた労働時間が8時間を超える場合は、「時間外労働」として取り扱われるべきものです。この原則は、そのような賃金問題としてだけでなく、労働者が、完全に労働(使用者の支配)から解放され、退勤後と同様に、1人の人間としての時間に戻るためのものですから、「人間らしい労働」のために、是非、大事にしたい原則です。

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