労働者のための労働法講座DIY教室

職場点検を基礎に、 労働条件改善・団結強化を勝ち取ろう

DIY(DO-IT-YOURSELF)というのは、自分たちのことは、人の手を借りずに、自分でやろうという運動です。
あなた方の職場では、法律の定める条件は、きちんと護られていますか。それを点検し、護られていない場合には、その遵守を要求し、働きやすい職場を実現していきましょう。また、社会保障制度の中で、労働者にどのような権利が保障されているかを知り、自分たちの権利の実現を確保していきましょう。

そこで、以下で、労働基準法、女性労働、非正規労働、労災保険法の4つの領域について、現実レベルで問題になるであろう基礎的な事柄を解説し(他の社会保障制度については、これらの領域に関連する場で、必要に応じて、触れていきます)、そのような運動の一助にしたいと、思います。また、東京労組の組合員でない方々も、これを基礎に、ご自分の職場環境・労働条件について、点検してみて下さい。

なお、ここで触れるのは、ごく基礎的なことです。現実の職場は、多種多様で、問題の起こり方は、きわめて複雑です。ですから、細かな事柄については、ここで述べたことを基礎に、「個別相談」という形で、対応させて下さい。

東京労組顧問・中央大学名誉教授 近藤昭雄

Ⅰ.労働基準法編

1. 毎日の労働時間は、きちんとカウントされ、労基法32条は、遵守されていますか。

●労基法32条は、「法定労働時間」(それを超えて働かせてはならない時間数)として、1日8時間・1週40時間という原則を定めています。したがって、後で示す、時間外労働の手続きをとらずに、それを超えて働かせた場合は、労基法違反で、処罰されますし、超えた分の労働は、「時間外労働」として、割増賃金の対象となります。……

2. 労基法は、32条に対し、数多くの例外を定めています。

1)労働時間「算定」の特例
①事業場外労働の「みなし労働時間制」 (38条の2)
②「裁量労働」の「みなし労働時間制」
  • Ⅰ.専門的労働型(38条の3)
  • Ⅱ.企画労働型(38条の4)
2)変形労働時間制
①1ヶ月単位の変形労働時間制(32条の2)
②1年単位の変形労働時間制(32条の4)
③1週間単位の非典型的変形労働時間制(32条の5)
④フレックスタイム制(32条の3)
3)時間規制に対する直接的例外
①適用除外(41条)
②44時間制(40条)
③時間外労働(33条・36条)……

3. 時間外労働

「時間外労働」というのは、1日8時間・1週40時間の「法定労働時間」を超える労働のことです。この時間外労働には、3つの形態※が認められていますが、最も一般的で、汎用性が高いのは、労基法36条が規定する「36協定に基づく時間外労働」ですので、以下、それに関して論及していきます。

●36協定に基づく時間外労働
チェックポイント
①時間外労働協定(36協定)はちゃんと締結されているか
②その内容、当事者は、適正か
③時間数限度は、守られているか

4. 休日

①毎週1日の「休日」が、きちんと、確保されていますか。
労基法35条は、週1日の「休日」を付与すべきことを定めています。今日、週休2日制がずいぶんと普及しましたが、労基法上は、休日は、週1日でいいことになっています。これを、一般に、「法定休日」といいます。週休2日制がとられている場合には、後述する「休日労働」との関係で、2日のうちいずれが「法定休日」に当たるのかを決めておかなければなりません。・・・

5. 休憩時間は、きちんと確保されていますか。

①使用者は、労働時間の長さに応じて、一定の長さの「休憩時間」を与えなければ、 なりません。
休憩時間の長さは、労働時間が 〜6時間の場合−0(付与義務なし)
6〜8時間の場合−45分
8時間超の場合−1時間
となっています(34条1項)。
②休憩時間付与の原則
Ⅰ.途中付与の原則(34条1項)−休憩時間は、労働時間の途中に与えるものでなければなりません。当然であるだけに重要なものですから、例外は、ありません。
Ⅱ.一斉付与の原則(34条2項)−−休憩時間は、事業場の労働者が一斉にとれるようにすることが原則です。小さなことのようですが、労働者が一斉に休むことによって、・・・

6. 年次有給休暇

①年休は、ちゃんと、とれてますか。
労基法における年休制度は、以下のようになっています。(39条①・②項)
・継続勤務6ヶ月……10労働日の年休
・+1年……+1労働日の年休(3年からは、+2日)
ただし、前年の出勤率が8割以上であることが要件 (最高20日)
◆これをまとめて、表で表すと、 ・・・

7. 賃金

労基法は、賃金については、その支払い方法を中心に定めています。 賃金支払い方法については、以下のような原則が定められています(24条)。

①通貨払いの原則
日本国内で通用力のある貨幣で、支払われねばならないということ。したがって、小切手での支払い(退職金については、認められます)や、ドル建てでの支払いは、許されません。ただし、労働協約で規定した場合(24条①項ただし書きは、「法令」に定めがある場合も、あげていますが、現時、そのような法令はありませんので、・・・

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